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ポルシェ専門店,これが分かればポルシェパラノイア 750
2013.07.16

昨日までシリンダーのガスケットについて書きましたが、今日はシリンダーの内径について少し付け加えます。
シリンダーの内径は単純に考えると均等の筒と考えがちです。
ポルシェの空冷シリンダは違います。
その理由を解り易くするため写真に撮りました。
写真のシリンダーは下に向けた方がヘッド側です。
写真上部からピストンをゆっくりとソフトにシリンダー内に挿入します。
入り切ったところで手を離すと中間はスムーズにスーッと滑るように落ちて下を向いたシリンダー上部でピタリと止まってしまいます。
なぜでしょう。
それは空冷のポルシェのシリンダーの内径が盆踊りの提灯のような形をしているからです。
もっと詳しくは説明するとシリンダー上部は中央部より、絞り込まれている事を意味します。
なぜ、そのように作られているのでしょうか。
そこがポルシェのポルシェたる所以です。
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オーナーにポルシェ整備の取材でエンジンのオーバーホールをお願いし、快く承諾を頂きました。
スルーボルトから見事な程オイルが漏れていましが、このような場合ロッカーアームやカムシャフトはどのような影響を受けているのでしょうか。インテークとエキゾストのロッカーアーム並べました。
上段左から右に1番、2番の順にエキゾストのロッカーアームが並んでいますが赤い荷札のロッカーアームの当たり面に相当のダメージが発生しています。
下段のインテークも同じ順番で並んでいますが4番、5番、6番がやはりエキゾストと同じレベルの損傷が発生しています。


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エキゾストのロッカーアーの一つをサンプルで撮影しました。
ロッカーアームの当たり面がこの状態になったらカムシャフトの当たり面も同等のダメージを受けていますから一本16万円以上と高価なカムシャフトは2本とも交換となります。
ここで何を申し上げたいかと云うことですが、2ヶ月も3ヶ月もエンジンを掛けないと、こうした状況になる確率が高くなります。
それはなぜでしょうか。
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次回に続く

ポルシェ専門店,これが分かればポルシェパラノイア 749
2013.07.15

1990年新車で購入し90,718km走行したポルシェ964カレラ2のシリンダーです。
このシリンダーはガスケットが使用されていない前期モデルです。
写真2段の上、左から1,2,3で下段左から4,5,6の順にシリンダーを並べています。

3番と6番シリンダーに吹き抜けが発生し、加えてカムカバー、チェーンカバーからオイル漏れが見受けられました。
ポルシェ整備の本を出版するにあたり取材対象車として、3本の矢ならぬ白羽の矢が立ったのはスルーボルトからのオイル漏れが特にひどく取材対象車として最も適していたのでオーナーにお願いし、ご協力頂くことなりました。

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これらのシリンダーはガスケットが使われていないため3番と6番シリンダーで吹き抜けを起こしました。
6気筒を全て洗浄し取材資料作成のため計測を行い不具合箇所の確認をしました。
吹き抜け箇所の痕跡を残すシリンダーです。
ご覧頂くため黄色で印を付け分かり易くしました。

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吹き抜け対策として、ヘッドを除きピストンとシリンダーは全て交換します。
シリンダーのみの交換は技術的に数値管理の問題があり、費用を考えると交換した方が安いからです。

下の写真はメタルガスケットです。
2本が1セットでエンジン組み付けには3セット必要ですが、価格は1本3,000円少々です。
右の写真を良くご覧頂くと同じガスケットですが、交差した下と上の表面の違いがお分かり頂けると思います。〇型の板を筒状にかしめ成型した合わせ目が上のガスケットをご覧頂くとはっきりと識別することができます。
この合わせ目が吹き抜け対策の重要な鍵です。

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ポルシェ専門店,これが分かればポルシェパラノイア 748
2013.07.14

ガスケットがない吹き抜け対策前のポルシェ964のシリンダーと対策後を比較するため並べました。
違いが明確にお分かり頂けると思います。
右側はガスケット用の溝がある吹き抜け防止対策が施されたシリンダーです。
ガスケットはメタルのステンレス製リングです。

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上記と同様にヘッドの違いをご覧頂くためアップしました。
写真右の対策済みのヘッドと比較すると形状の違いがお分かり頂けます。
シリンダーは交換する必要がありますが、少しでも費用を抑えるため写真左のヘッドは研磨し右同様の形状に修正しバルブシールを装着できるようにした上で再使用します。
なお、耐久性等については全く問題はありません。

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2回に亘りシリンダー及びヘッドについて吹き抜け対策前と後の部品について、ご説明をいたしました。
因みにヘッドは1セット約20万円しますから交換した場合、エンジン1セットのパーツ代だけで6気筒分で120万円になります。
ポルシェの修理はパーツ代が高額になるので多少なりとも費用を圧縮するためこうした小さい努力の積み重ねが不可欠です。

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ポルシェ専門店,これが分かればポルシェパラノイア 747
2013.07.13

1989年から生産されたポルシェ964の前期モデルはシリンダーとヘットのジョイント部にガスケッが使用されていないことは既に一昨日のブログに書きました。
写真はシリンダーのボアの摩耗状況を計測しているところです。
上死点から20mm、56mm、86mmのポイントの数値を計測しますが、一気筒につき6ポイント、シリンダーを上部から見て十字に計測しますから、一気筒当たり6ポイントで6気筒だと36ポイントを測り気筒毎の摩耗値を記録します。

写真のシリンダーは1990年前期のモデルでガスケットが使用されていませんから、このシリンダーが再び使われることはありませんが、摩耗した数値を記録に残すため6気筒全て計測を行います。

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このシリンダー は前期型でガスケットが装着されていないため3番と6番シリンダーに吹き抜けが発生していました。
吹き抜けの状況はシリンダーとエンジンヘットの接合部位にパッキングがなく精密加工でアルミ同士をボルト締めしているだけですから、長い間の多様な走行条件の下、熱で歪みジョイント部分に隙間が発生する状態を言います。

写真左のシリンダーが今回オーバーホールを行っているガスケットの装着溝がないシリンダーです。
右はシリンダー外周にガスケット用の溝が掘られた対策済みシリンダーです。
1991年後期モデルから対策部品として提供されています。

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同じシリンダーを横から眺めました。
対策前のシリンダーは上部、ヘッドとの接合部にテーパーが付き円錐形をしているのがご覧頂けるでしょうか。
シリンダー上部 テーパー の先端部がヘッドと接触しボルトで締め付けてあるのですが、エンジン本体から発生する高熱で長い間に極々僅かな歪みが生じる現象を吹き抜けと言い当然出力の低下をきたします。

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次回に続く

ポルシェ専門店,これが分かればポルシェパラノイア 746
2013.07.11

昨日のブログに取り上げたエンジン、ミッションを外したポルシェ964カレラ2 です。
設計会社を経営されるオーナーが1990年に三和自動車販売から新車で購入されました。
既に独立された二人のご子息は車に全く興味がなく、足廻り、駆動関連は1年前に弊社でメンテナンスを終了しています。
ご自身は仕事が忙しく月に1回乗るかどうかでご子息はポルシェどころか車に無関心で、この歳を考えるとエンジンのオーバーホールをすべきかどうかと迷われていました。
因みに年齢は考えるような歳ではなく、今ここで不良箇所を全て整備したなら新車と同等に蘇り、ご主人様より先に不具合が生じることはございません。などとお互い冗談を言い合えるお客様です。
弊社が創業当初から実施している無料点検制度で診断した結果、エンジンのタペットカバー、チェーンカバー、そしてスルーボルトからのオイル漏れが特にひどく今回の出版に際し、修理課程の取材用にご協力をお願いし快く承諾いただきました。

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ポルシェ964カレラ 2 の生産開始は1990年で1993年迄にマニュアル車のクーペは 13,353台、タルガ1,329台、カブリオレは4,802台生産されました。
以前の自動変速機であるスポルトマチックから新機構のティプトロニックが採用され、日本では東京の渋滞でも快適に乗れるポルシェとして大いに人気を得たのは云うまでもありませんが後に大きな課題を抱える結果にもなりました。
ポルシェ964から採用された新機構の自動変速機ティプトロニックを搭載した964はクーペは 18,213台、タルガ3,534台、カブリオレは11,013台とマニュアル車4に対し6と販売台数は飛躍的な伸びを示しました。

エンジンとミッションが下ろされカンバックに備え蒸し暑い日本の夏を避けるようにガレージの片隅で待機するポルシェ964カレラ 2 です。

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7月に入ったとたん気象庁は梅雨明け宣言
例年にない猛暑と湿気が襲う7月第2週初日から再び撮影と取材が始まり作業は深夜に及びました。
この964カレラ 2 は前期型でシリンダーとヘットのジョイント部にガスケッが使用されていないため3番と6番シリンダーに吹き抜けが発生していました。
1991年後期モデルから対策部品の提供が始まりました。このシリンダーとピストンは交換になりますから再び使われることはありませんが、使用されない6気筒全てを洗浄後、出版のための資料としてのデータ計測が行なわれます。

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