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ポルシェ専門店,これが分かればポルシェパラノイア 755
2013.07.24

東京の猛暑から逃げ出す様に昨日までの二日間、信州に行ってきました。
一昨日22日(月)10時に出発し中央道を諏訪まで走りました。
夏休みに入り何時もより交通量は多く80kmで走行中のトラックを90kmで追い越すトラックが併走する状態があちこちで見られ自然渋滞調整箇所は上り3車線ですから仕方ないのでしょう。
ふらふらと追い越し車線に出てくるドライバーや明らかに睡魔と格闘中のトラックにも出くわし、暑さも少し解消したのかもしれません。

今朝の東京は少し気温が低めですが相変わらず湿度は高いようです。
何時もの朝の様に30℃を越す気温でしたら、これから読んで頂くブログは涼を呼ぶ最良のタイミングだったのですが、取りあえず近況報告のつもりでアップしました。
国道299号線長野県諏訪と佐久の境界線でここより先は佐久穂町です。
一昨日の東京は猛暑日でしょうから、ここは正に別天地です。
したたる緑が辺り一面を覆い尽くし、忘れた頃に車が通過するだけですから、自然だけが支配し、その中に身を置くと心が洗われる思いです。

八千穂八千穂



後ろは今、走って来た諏訪までの道路標識が掲げられています。
この時期でも上り勾配がきついヒルクライムの国道を通って佐久、諏訪に出るトラックは皆無で冬期は通行止めの国道です。
更に進んで日本で2番目の標高を有する国道、麦草峠です。
上って来た諏訪側の勾配は、きつくつづら折りが続き佐久側は割合なだらかな裾が拡がっています。
諏訪と佐久の郡境から白駒池付近迄は、はなだらかで平らが続きこの付近は当然道路も直線に近いですから道路脇に駐車し、暫く森林浴を楽しむことができました。

八千穂八千穂



麦草峠から八千穂高原に向かって1km程の国道脇に白駒池駐車場があり、大型の観光バスが4台と自家用車が30台ほど駐車し、脇のベンチでは持参したコンロで湯を沸かしお茶を楽しむ登山者の姿もあり、思い思いに爽やかな高原の雰囲気を楽しんでいるようです。
今日中に打ち合わせを三つ控えた我々とは違い高原で優雅な時間を味わっています。この付近から若草のように瑞々しい草が白樺の木の足下を覆いその奥は白檜曽(しらびそ)の原生林が続いています。

八千穂八千穂



次回に続く

ポルシェ専門店,これが分かればポルシェパラノイア 754
2013.07.21

ポルシェ964カレラのエンジンフードを開けた写真ですが、誰もが共通して思うことのひとつにこの狭いスペースにぎりぎり一杯に収められたエンジンです。
中央にクーリングファン、右隣にはエアコンのコンプレッサー、右手前底に穴の開いた食器を伏せたようなエンジンマウントの隙間、奥まった所にボルトで縦向きで留めたチェーンカバーが僅かに見えます。
昨日のブログに書きましたがチェーンカバーの材質はマグネシウム合金のため、経年劣化で腐食が発生します。
ガスケットが装着される溝に沿って腐食しますから発生箇所は半ば特定されています。
ポルシェ964のチェーンカバーは腐食による交換の場合、現在もマグネシウム合金製が送られて来ます。

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993カレラのエンジンです。
964とサイズは同じで、これだけ大きいのに良くあの小さなエンジンルームに収まると関心するばかりです。テレビで自動車の生産ラインを見ることがありますがエンジンは上で吊られフロントボディーに収まって行きます。
ポルシェはその逆の工程でリアに組み付けられます。

1980年代、 ドイツ人が好む小話の日本語版です。
ガソリンスタンドでエンジンオイルを見ますか。と聞かれ運転席に居ながら解錠フックを引く。
ボンネットを開けたスタンドマン 「あ、エンジンがない」
“ポルシェクラブ六本木” の名称が “ポルシェオーナーズクラブ東東京” であった1989年秋 “キャノンボール” をもじった “ニコンボール” なる名称で東北自動車道を走破しました。
今は鮪で有名な青森県大間までの長丁場、とある県のある所で、若い頃はさぞ美人であったであろう女性が赤い930を見て「まぁ可愛い車だなぁ。なんて言う軽」と聞かれました。
真っ赤なポルシェが真っ赤な車の替え歌にされたから知らなかったのでしょうか。
その頃の実話です。

993のチェーンカバーです。
964も993もマグネシウム合金製ですが、現在は黒い防腐剤と思われる塗装が施されています。タペットカバーは964はアルミ製に993は耐熱強化プラスティック製に変更され応力腐食することはなくなりました。

今日のブログ最初の写真ではチェーンカバーがエンジンのどの位置にあるか分かり難いのでエンジン単体で掲載しました。
964に乗っているポルシェ乗りの皆さんのチェーンカバーは経年劣化による腐食から、必ずオイル漏れが発生します。
その場合、交換が必要なことを知って頂くため964とほぼ同一構造を持つ993のエンジンを掲載しました。

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昨日のブログの続きでポルシェ968について少し横道にそれます。
1993年から1995年までに合計で11,242台生産されました。
この頃ポルシェ社を訪ね色々な質問をした中で、注文すればどんな車でも作ることが出来ると自信を持って言われました。
928V8のエンジンブロックの片側1/2を使い作られていると聞いていましたから、いろんなスペックのポルシェが生まれても何ら不思議ではありません。
968CSクーペが発売された時は、名車964RSが発売された直後でもあり、価格と性能とブランドを考えるとポルシェ通はRSのスペックとイメージが勝手にリンクし、あっと驚いたものです。
クーペとCSクーペの相違はタイヤサイズがフロント 205/5516 リアが225 /50 16に対し225/45 17 と255/40 17で乾燥重量は1,370kgに対し丁度50kg軽量化され1,320kgでしたが馬力はクーペと同じ240馬力で非力さは拭い切れませんでした。
その後登場したのが968ターボSクーペでした。
出力は240馬力から305馬力と65馬力のアップとなり、タイアサイズは225 /40 18 と265 /35 18 でズバ抜けて逞しくなり乾燥重量は1,300kgと更に軽量化が計られました。
問題の価格は2倍以上となり僅か14台生産されただけに留まりました。
964 の3.8 と同じホイールを装着しボンネットにはナサスクープが付き、ただモノでない様子が伺えます。

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次回に続く

ポルシェ専門店,これが分かればポルシェパラノイア 753
2013.07.20

ポルシェの設計思想の重要な部分に軽量化とバランスがあると確信します。
軽量化については後に述べることにして、まずバランスについて20年以上前に経験したことを少し書きたいと思います。
1991年当時からポルシェ社のツェフェンハウゼン工場を訪ね、個別にいろいろな注文を聞いてもらっていました。
その頃の話ですが1993年三和自動車が限定車の 968ターボSクーペを968CSクーペの何倍かする破格の値段で注文を採りました。
その後、この車が気懸かりでいましたから1995年にツェフェンハウゼン工場を訪ねた時、ヘルムート・ピーチさんに 968ターボSクーペの質問したところ、製造された14台は既に完売したと云われました。
何とかもう1台作ってほしいとお願いしましたが叶いませんでした。
その時、968CSクーペをベースに同一のスペックで作ることはできると言われ狂喜し早速注文をしました。
その時言われたことは、今でも鮮明に覚えています。
ブレーキ、足回り、駆動系全てを交換すると云う内容でしたから、その理由をお聞きました。
設計の段階から緻密に計算して作られているから、どこのバランスが崩れても駄目だと言われたことを鮮烈に思い出します。
962の開発にも携わったエルマー・ウィルレットさんが同席され7月23日の昼前、ツェフェンハウゼン工場の木煉瓦を床に敷き詰めた工場の一角にあるすっきりしたデザインの小部屋でアドバイスを受けました。
当時ポルシェ社に勤務された方達は、途半ばにして他界された方、悠々自適な年金生活に入られた方等々、当時からの方はもう一人しか在籍していません。
その時代ポルシェ社を訪ねると何時も相談に乗って頂ける名工と呼ばれる方々にお会いできたのは最も大きな財産となりました。
その頃、ポルシェ社はファミリーだと云われた所以です。

下の写真4枚はチェーンカバーとタペットカバーです。
軽量化のため材質はマグネシウム合金で作られています。
軽く曲げや延びに強い代償としてマグネシウム合金の欠点は応力腐食が発生することです。
二つ並んだチェーンカバーの左が内側です。
拡大した写真、丸印の部分がガスケットを装着する溝ですが、腐食が発生しているため交換となります。本来は均質であるべきマグネシウム合金にできた空間の鬆(ス)を伝って、オイル漏れを来すため交換します。
因みに価格は1枚3万円です。

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一方タペットカバーは1993年から対策部品としてアルミ製になりましたが、参考のためにマグネシウム合金の腐食箇所を丸で印ました。
チェーンカバー同様、応用腐食により生じた鬆が筋状に白く光っているのが、お分かり頂けると思います。

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上がマグネシウム合金製のタペットカバーで下がアルミ製で対策部品です。
因みに アルミ製インテークが 53,500円でエキゾストは 56,800円で価格に相違があります。
軽く曲げや延びに強いが、問題の重さを比べるとマグネシウム合金製のエキゾストが 634.5gに対し、写真下のアルミ製は293g重い927.5gです。
重さについては実にマグネシウム合金がアルミ製の約2/3です。
ポルシェを構成する部品のひとつひとつにこのような設計思想が息づいているのでしょう。

最後の写真は993カレラで車種は964と違いますがエンジンの基本設計は同じで、違う箇所はカムハウジングの形状が変更されていることです。
上がインテーク、下はエキゾストでロッカーアームが外されています。
問題の軽量化に関連し大きな変更はタペットカバーの材質です。
964はマグネシウム合金からアルミ製に変更となりましたが、993からは耐熱強化プラスチックに変更となり再び軽量化が計られています。
チェーンカバーについては、次回に書かせて頂きます。

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次回に続く

ポルシェ専門店,これが分かればポルシェパラノイア 752
2013.07.18

カムシャフトのブログについて、もう少し続けますが、その前にちょっと・・・

ポルシェは小型で高性能の空冷エンジンをボディー後部に搭載していますから、カーブへの進入時と脱出時にブレーキとアクセル、そしてハンドルを微妙に遣い分けコントロールできることを掴んだならポルシェに勝る足廻りのスポーツカーは見受けられないでしょう。
路面からタイヤ、そしてボディーからシート、大腿部、背中へ、ハンドルから手に伝達される路面からの情報をタイヤが滑り出す直前の極限の状況で感知し体感したなら、ポルシェの奥深さと全ての性能の素晴らしさを知ることとなるでしょう。

しかし、ドライバーの技量が何とか、そこまでに達するとポルシェは、またその先で、ここ迄おいで、とでも言うように手招きしていることに気付くでしょう。
その魅力がポルシェの奥深かさでもあるのです。

一介のポルシェ乗りは一度手痛い経験をすると、その先へ踏み出すのを極端に躊躇するようになってしまいます。
その壁を越せるかどうかが、その先の技量の上達に繋がって行くのでしょう。
多くのポルシェ愛好家はブレーキとアクセル、そしてハンドルを遣い分けを感知する前にサーキット走行から引退して行くのです。
その理由はいくつか挙げられますが、次の機会とし本題のカムシャフトの話に戻します。

ポルシェ964のエンジン、ミッションのオーバーホールに付随する計測が始まった直後にエンジンとミッションのジョイント部からオイル漏れの 993の整備をすることになりました。
再来週7月27日の週末に北海道へドライブに出かける計画で点検のため入庫しました。

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オーナーは以前からムラタチューンで整備をされ修理履歴は全て分かっていますから以前からの課題、エンジンとミッションのジョイント部のオイル漏れの再点検をしたところ、前回の点検時 85,669kmから8,749km積算しオイル漏れの状況が悪化していることが判明しました。
すぐエンジンとミッションを下ろしエンジンルームでタペットカバーを外し点検した状況の写真です。
左バンク3番カムシャフトに異常を見付けオーナーに連絡を入れ昨日の夕方お越し頂きました。
ご覧の通り既に外されたロッカーアームは問題はないのですが、右の写真でお分かりの通りカムシャフトは964に匹敵するほどの虫食い (錆による当たる面の荒れ) が発生していますから、交換となります。
ドイツからパーツが到着次第修理にかかりますが、着荷後は時間との勝負です。

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一昨日掲載のポルシェパラノイア 750 の冒頭で紹介した空冷ポルシェのシリンダーとピストンの ?? について追記いたします。
写真上部からピストンをゆっくりとソフトにシリンダー内に挿入します。
入り切ったところで手を離すと中間はスムーズにスーッと滑るように落ちて下を向いたシリンダー上部でピタリと止まってしまいます。
なぜでしょう。
それは空冷のポルシェのシリンダーの内径が盆踊りの提灯のような形をしているからです。
もっと詳しくは説明するとシリンダー上部は中央部より、絞り込まれている事を意味します。
なぜ、そのように作られているのでしょうか。
シリンダーのヘッドは中央部より 0.03mm絞り込まれていますが、その理由はプラグに近いヘッドが高速走行中、高熱で膨張する数値を計算し設計されているからです。
それがポルシェのポルシェたる所以です。
因みに964のシリンダーの長さは120mmで内径は100mmです。
 
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次回に続く

ポルシェ専門店,これが分かればポルシェパラノイア 751
2013.07.17

ポルシェはフロントエンジンの車種以外は水平対向の所謂ボクサーエンジンを搭載しています。
写真上段が左バンク、下段が右バンクのカムシャフトです。
水平対向エンジンを搭載するリアエンジン構造のポルシェは後部から見て、左側を左バンク、同様に右側を右バンクと言います。
シリンダーは左手前から1,2,3番の順に、同様に右手前から4,5,6番の順に並んでいます。
ムラタチューンの整備ブログで良く見かける名称ですから覚えて頂くと、万一エンジンに不具合が発生した時の参考になるのではないでしょうか。

カムシャフトの両端で光っている大きな円筒部の名称をジャーナルと言います。この部分がカムハウジングの軸受けとなります。
右、写真のジャーナルの右にメッキをしたように光っている部分がロッカーアームの当たり面、またはカム山と言います。


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昨日のブログに書いたロッカーアームの当たり面と、写真のカムシャフトの当たり面が接触することで吸気、排気のバルブをロッカーアームを介し開閉します。
本来ロッカーアームもカムシャフトの当たり面もメッキをしたようにぴかぴか、つるつる でなければなりません。
しかしご覧の通り、がりがりで鼠にかじられた様になっていますから、交換が必要となります。
その原因は昨日のブログで ?? のままでした。

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左バンク、右バンクのカムシャフトは損傷の差はあっても当たり面に傷があり写真でご覧頂いたレベルになってしまうと交換するしかありません。
オーナは仕事が多忙を極め、愛車のポルシェは2,3ヶ月車庫に眠ったままの状態が、ここ数年続き日常の足はもっぱらベンツを愛用していたのでポルシェが焼き餅を焼いたわけではありませんが、運動不足で健康を害したのは間違いありません。
車庫で休んで居る時はロッカーアームもカムシャフトもエンジンオイルが循環しない所謂オイルの中に浸かっていない状態のため当たり面に錆が生じます。
ご主人様がたまにはポルシェでと何ヶ月ぶりかに乗ったなら、錆びたロッカーアームとカムシャフトの当たり面が高回転で接触しカサブタを擦るに等しい状態が発生しますから、皮膚に相当する当たり面は損傷し写真の様な状態になります。

エンジンがこのような状態であることを、オーナーにつぶさに知って頂くためオーバーホールをする場合、洗浄が終わり計測が完了した時点で、オーナーが幾ら忙しくても、ご来店頂き愛車のポルシェの容体と今後の修理の方針をご説明し承諾頂いた上で修理を始めます。

建築設計に携わるオーナーはつぶさにカメラに収め説明に聞き入って頂きましたが、同様の仕事をする同士ですから相通じる部分を瞬時に理解して頂きました。
これこそ職人冥利つきます。

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次回に続く